可観測な線形システムを座標変換しても可観測

結論

可観測な線形システムを座標変換しても、可観測だということを述べる。

つまり:

線形システム\begin{eqnarray}\dot{x}(t) &=& Ax(t)+Bu(t)  \\ y(t)&=&Cx(t) + Du(t) \end{eqnarray}

の状態 \(x(t)\) を別の状態 \(z(t)\) に \(x(t) = Tz(t)\) (\(T\) は正則行列)で座標変換したとき、

システムの可観測性は保存する。

 

※状態空間表現についてはこちらをご覧ください。

※可観測性についてはこちらをご覧ください。

 

わかること

解析しやすくするため、システムを座標変換したとき、

「内部状態をセンサから観測できなくなる事態は発生しない」と保証できる。

 

モータの角度、角速度が計測できる直流モータの状態空間表現は

\begin{eqnarray}&\frac{d}{dt}\begin{pmatrix} x_1 (t) \\ x_2 (t)\end{pmatrix}&=\begin{pmatrix} 0 & 1 \\ 0 & -\frac{1}{T_m}\end{pmatrix}\begin{pmatrix} x_1 (t) \\ x_2 (t)\end{pmatrix}+\begin{pmatrix} 0 \\ \frac{1}{T_m K_E}\end{pmatrix}u(t) \\ &\begin{pmatrix} y_1 (t) \\ y_2 (t)\end{pmatrix}&= \begin{pmatrix} c_{\theta} & 0 \\ 0 & c_{\omega}\end{pmatrix}\begin{pmatrix} x_1 (t) \\ x_2 (t)\end{pmatrix}\end{eqnarray}とかける。※詳細はこちらをご覧ください。

 

このシステムは \(T_m, K_E \neq 0,\infty\) であるため

\[{\rm rank} \begin{pmatrix}C \\ CA\end{pmatrix} = {\rm rank}\begin{pmatrix}c_{\theta} & 0 \\ 0 & c_{\omega} \\ 0 & c_{\theta} \\ 0 &   -\frac{c_{\omega}}{T_m}\end{pmatrix} = 2\]

より可制御である。

 

次にこのモータのモデルを座標変換する。ここでは

\[\begin{pmatrix} x_1 (t) \\ x_2 (t)\end{pmatrix} = \underbrace{\begin{pmatrix} 1 & 1 \\ 0 & -\frac{1}{T_m}\end{pmatrix}}_{\text{\(T\)}} \begin{pmatrix} z_1 (t) \\ z_2 (t)\end{pmatrix}\]

とする。

※この正則行列 \(T\) は適切に選ぶ。さまざまな方法が提案されている。

 

座標変換を代入・整理・計算すると、モータのモデルは以下のように書き直すことができる。

\begin{eqnarray}&\frac{d}{dt}\begin{pmatrix} z_1 (t) \\ z_2 (t)\end{pmatrix}&=\begin{pmatrix} 0 & 0 \\ 0 & -\frac{1}{T_m}\end{pmatrix}\begin{pmatrix} z_1 (t) \\ z_2 (t)\end{pmatrix}+\begin{pmatrix} \frac{1}{K_E} \\ -\frac{1}{K_E}\end{pmatrix}u(t) \\ &\begin{pmatrix} y_1 (t) \\ y_2 (t)\end{pmatrix}&= \begin{pmatrix} c_{\theta} & c_{\theta} \\ 0 & -\frac{c_{\omega}}{T_m}\end{pmatrix}\begin{pmatrix} z_1 (t) \\ z_2 (t)\end{pmatrix}\end{eqnarray}

この変換後のシステムの可観測性を判定する。

\[{\rm rank} \begin{pmatrix}C \\ CA\end{pmatrix} = {\rm rank}\begin{pmatrix}c_{\theta} & c_{\theta} \\ 0 & -\frac{c_{\omega}}{T_m} \\ 0 & -\frac{c_{\theta}}{T_m} \\ 0 & \frac{c_{\omega}}{T_m^2}\end{pmatrix} = 2\]

よって、変換後のシステムも可観測。

 

座標変換しても、(同じモノを表現しているため)可観測という性質は変わらない。

 

証明

「元のシステムが可観測ならば、座標変換後のシステムは可観測」であることを示す。

つまり:\begin{eqnarray}\dot{x}(t) &=& Ax(t)+Bu(t)  \\ y(t)&=&Cx(t) + Du(t) \end{eqnarray}について

\begin{eqnarray}{\rm rank} \begin{pmatrix}C \\ CA \\ \vdots \\ CA^{n-1} \end{pmatrix}=n \tag{Assumption}\end{eqnarray}が成立するとき、座標変換後のシステム

\begin{eqnarray}\dot{z}(t) &=& \underbrace{T^{-1}AT}_{\text{状態 \(z\) での行列 \(A\)}} z(t)+\underbrace{T^{-1}B}_{\text{状態 \(z\) での行列 \(B\)}}u(t)  \\ y(t)&=&\underbrace{CT}_{\text{状態 \(z\) での行列 \(C\)}} z(t) + \underbrace{D}_{\text{状態 \(z\) での行列 \(D\)}}u(t) \end{eqnarray}の可観測の条件

\begin{eqnarray}{\rm rank} \begin{pmatrix}(CT) \\ (CT)(T^{-1}AT) \\ \vdots \\ (CT)(T^{-1}AT)^{n-1} \end{pmatrix}=n \tag{Conclusion}\end{eqnarray}

が成り立つことを示す。

 

(Conclusion) の左辺をさらに式変形すると

\begin{eqnarray}{\rm rank} \begin{pmatrix}CT \\ CAT \\ \cdots \\ CA^{n-1}T \end{pmatrix} \end{eqnarray}

\begin{eqnarray}{\rm rank}\left(\underbrace{\begin{pmatrix}C \\ CA \\ \vdots \\ CA^{n-1} \end{pmatrix}}_{\text{(Assumption) より rank \(=n\).}}\underbrace{T}_{\text{変換行列より正則.}} \right)=n \end{eqnarray}

よって座標変換後の可観測性行列のランクも \(n\) となる。

したがって可観測なシステムを座標変換しても、可観測のまま。

 

参考文献

[1] 梶原 “線形システム制御入門,” コロナ社, 2000.

北海道大学大学院情報科学研究科修士課程修了。
機械メーカにて開発業務に従事したのち、フリーのエンジニア・講師として活動中。

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